伝統構法の家

伝統構法とは

日本の伝統的な木組みの建築構法です。「木」と「木」を組みあわせ、金物を使わず、構造架構「木組み」そのもので家を建てるという伝統的なやり方です。寺社仏閣といった木造建築に用いられ、木組みの見た目の美しさもさることながら、耐震強度・耐久性・メンテナンス性など優れた点がいくつもあります。

しかし、現在 建築されている木造軸組み構法住宅のほとんどは在来構法であり、伝統構法は1%程度しかありません。確認申請などに通常よりも時間がかかったり、建築工期そのものも少し長くなります。しかし、最大の原因は、こういった建築技術をもつ大工職人が少なくなっている事、手間のかかる仕事を施主様に薦めてこなかった事だと思います。

尾上組は、伝統的な大工職人の仕事を継承していくために、伝統構法の魅力をお伝えしていこうと考えています。

まずは伝統構法で立てる上棟の日の様子をご覧ください。
かつて日本では、このような光景が建築現場でみられました。かけやを振り下ろす音が聞こえると、棟上げをやっていることが周辺の人たちにもわかったものです。

石場立(いしばだて)

石場立
伝統構法の見た目にもわかる、大きな特徴は石場建て。柱の根元をアンカーボルトで緊結せず、束石の上に乗せる構法。束石構法とも呼ばれます。
普段は、建物そのものの重みで安定しています。地震の際、地面が揺れても、緊結していないため建物だけが滑るように揺れを吸収し、受けるダメージが少なくなります。基礎に緊結している建物では、受けるダメージは さらに大きくなると考えられます。

通し貫き(とおしぬき)

通し貫き
木材を水平に貫通させくさびによって柱と貫を固定させます。地震の揺れを吸収させる、または揺れのエネルギーを逃す役割を持ちます。
大きな揺れになると、筋交いは外れてしまったり、折れてしまったりすることがありますが、揺れのエネルギーを分散させ、建物におよぶダメージを最小限にする効果があります。

込み栓(こみせん)

込み栓
鉄製のくぎのかわりに使う、木製の栓。柱と土台、または柱と桁などの仕口を固定するために、2材を貫いて横から打ち込みます。
金具を使う場合より、地震など外部の力が加わっても復元力が強いのです。また木と木は組み合わさると、引き付け合う効果としても発揮します。20ミリ角程度の堅木材。貫通させたホゾの先に打つのは鼻栓。

土壁(つちかべ)

土壁
一般には木舞(こまい)と呼ばれる格子状の枠に土を塗り重ねた壁となる。防火効果、吸湿効果、壁そのものの地震など揺れに対する粘り、などの優れた機能を持ちます。また、土そのものは、将来の建て替えや、メンテナンス時にも再生できる、非常にエコロジーな素材です。

伝統構法は長寿命

伝統構法の家とは、おもに上記の4つの構造、すなわち地面と緊結せずに、通し抜きで揺れを分散させ、また木どうしで引き付け合い、復元しながら、土壁のねばりも合わせて、そこに建っています。
メンテナンス性が高く、修繕しながらで約300年は持たせられると考えています。
日本の木造建築・寺社仏閣が古くから残っている事実を思えば、300年も大げさな年月ではないはずです。